DX推進における課題と実施のポイント
デジタルトランスフォーメーション(DX)への各企業の取組みは、この数年で加速的に広がりを見せています。発端となったのは、2018年に経済産業省が公表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』ともいわれており、当初は「内容については理解できるが、取り組み方が分からない」という声も多く見受けられました。
最近では、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定を行う『DX銘柄』の2021年が公表されるなど、他社の事例を参考にできる機会も増え、以前に比べてDXの全体像をイメージしやすい環境が整いつつあります。
一方、DX推進に向けては課題も山積しているのが実情です。
そこでこの記事では、DX推進における課題と、DX実施のポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.DX推進の課題
- 2.DX推進のポイント
- 2.1.①経営層を巻き込んだビジョン・戦略の立案
- 2.2.②専属チームの体制構築
- 2.3.③スモールスタートでの始動
- 2.4.④自社に合わせたシステム・ツールの選定
- 2.5.⑤DX人材の確保および育成
- 3.まとめ
DX推進の課題
DXの推進に際してはたびたび課題も浮き彫りになります。
経済産業省では大きく以下の5つを取り上げています。
A)既存システムの問題点を把握し、いかに克服していくか、経営層が描き切れていないおそれ
B)既存システム刷新に際し、各関係者が果たすべき役割を担えていないおそれ
C)既存システムの刷新は、長期間にわたり、大きなコストがかかり、経営者にとってはリスクもあり
D)ユーザ企業とベンダー企業の新たな関係の構築が必要
E)DX人材の不足
出典:経済産業省『産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進』
なかでもよく聞かれるのはCとE、コストと人材面の課題です。
しかしながら、2025年の崖問題などを考慮すると、DXはハードルも高いが先送りもしにくいテーマだと考えられます。
まずはDXを推進する対象を絞り、スモールスタートで始めていくといった考え方も重要です。
DX推進のポイント
上記で挙げた課題を踏まえると、DX推進におけるポイントは以下の5つが挙げられます。
①経営層を巻き込んだビジョン・戦略の立案
DXはトップダウンで進めることが重要です。各現場だけでなく、経営層が主導して組織全体を巻き込み、ビジョンや戦略を提示していく必要があります。
経営層がリーダーシップを発揮して、中長期的に推進してくことが重要です。
②専属チームの体制構築
DX推進する際は、DXに経営資源を投入して体制を構築し変革を引き起こす必要があります。IT部門に任せきりになるケースも見られますが、一つの部門に偏ってしまうのは要注意です。
経営層・事業部門・IT部門からなる専属チームを立ち上げ、ミッションとしてDX推進に取り組みましょう。DXをスムーズに進めるための基盤を作り上げることが大切です。
③スモールスタートでの始動
初めから大規模なDXを実施するのはリスクの面でも有益とはいえません。ビジネスモデルの変革やシステムの刷新などゼロベースでDXに取り組む場合は特に慎重に進めることも必要といえます。
また、ノウハウがないまま走り出してしまうと、トラブルに適切な対応ができず、事態を悪化させてしまう可能性もあります
DXに取り組む際は、まずはDXを実施する業務やシステム、業務プロセスなどの対象を絞り、スモールスタートすることが大切です。
④自社に合わせたシステム・ツールの選定
自社の事業領域や業務内容に合うツールの活用は、DX推進にとってなくてはならない要素です。システム・ツールを選定する際は、本来の目的である生産性向上を実現できるツールを選ぶことが重要といえます。
また、全社で横断的なデータ活用ができるかも大切です。複数の業務プロセスに対応できるか、分散したデータを一元管理できるかなどを考慮して選定しましょう。
⑤DX人材の確保および育成
DXには、ITやデジタル技術、データ活用が求められます。これからDXに取り組もうという企業のなかには、社内のIT人材が不足しているケースもあります。
DX人材を確保するための方法は以下のとおりです。
- 新規でDX人材を採用する
- DX人材の派遣サービスを利用する
- 社内でDX人材を育成する
- DXに長けた企業買収・連携を実施する
- コンサルティングを依頼する
DXはシステム・ツールを導入すれば終わりではありません。目先のDXを担当するだけでなく、長期的に社内DXに取り組める人材を確保・育成することが重要です。
まとめ
DX推進においては課題もありますが、実現によって解消される業務課題、経営課題も多いといわれています。
DXを推進するためには、経営層が主導するDX推進チームを立ち上げ、全関係者が強い意思を持って取り組むことが大切です。いきなり大規模なDXに取り組もうとせず、スモールスタートで始動することも大切です。自社の業務領域や業務内容に合わせたシステム・ツールを活用して、データ活用から生産性向上を目指し、競争力を培っていくのもよいでしょう。
経済産業省がまとめている『DXレポート』も取り組みの参考になります。併せて参考にしてみてはいかがでしょうか。
経済産業省