経営分析のやり方とは? 手法や正確な経営分析を行うためのポイント解説
売り上げの向上を目指す場合、経営分析によって自社の経営状況を正しく把握したうえで経営戦略に落とし込むことが重要です。
しかし、売り上げ向上のために経営分析を行いたいと思いながらも、「どのように分析を行えばよいのか分からない」という場合もあるのではないでしょうか。
本記事では、経営分析の概要や分析のやり方、正確な経営分析を行うためのポイントについて紹介します。
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経営分析とは
経営分析とは、企業の収益力や財務状況などをさまざまな数値から分析することです。
企業が経営を行ううえでは、多くの意思決定の機会があります。企業の状況に応じて的確な経営判断を行うためにも、現状把握と将来予測のための分析が必要といえます。経営上の問題・改善点などを把握することで、経営危機を回避することも可能です。
また、さまざまな指標を用いて経営分析を実施することによって、客観的に自社の強み・弱みを把握できるため、事業計画の策定や見直しにも役立ちます。企業の安全性や成長性を測る指標にもなるため、ステークホルダーの投資判断にも取り入れられています。
経営分析のやり方
経営分析は、主に収益性・安全性・効率性・生産性・成長性といった5つの指標が用いられます。それぞれの指標と分析手法を紹介します。
収益性分析
収益性分析とは、企業の収益力を測る分析手法です。利益額もしくは利益率を基に測定を行います。収益性分析には以下の方法があります。
○資本利益率分析
資本利益率分析は、通常の営業活動においてどの程度の利益を得られたのかを示す指標です。
この数値が高いほど、収益性が高いと判断できます。
▼計算式 総資本経常利益率(%) = 経常利益÷総資本 × 100 |
○総資本経常利益率(ROA)
総資本経常利益率(ROA)は、企業が投資したすべての資本(貸借対照表の貸方合計)において、通常の営業活動でどの程度の利益を得られた獲得したかを示す指標です。
この数値が高いほど、収益性が高いと判断できます。
▼計算式 総資本経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 総資本 × 100 |
○自己資本利益率(ROE)
自己資本利益率(ROE)は、自己資本を利用してどの程度の利益を生み出したかを示す指標です。この数値が高いほど、収益性が高いと判断できます。
▼計算式 自己資本当期純利益率(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 |
○売上高総利益率
売上高総利益率は、売上高のうち、売上総利益(売上高−売上原価)がどの程度占めているかを示す指標です。この数値が高いほど、収益性が高いと判断できます。
▼計算式 売上高総利益率(%) = 売上高総利益 ÷ 売上高 × 100 |
○売上高営業利益率
売上高営業利益率は、売上高のうち、営業利益(売上総利益−販売費・一般管理費)がどの程度 占めているかを示す指標です。この数値が高いほど、収益性は高いといえます。
▼計算式 売上高営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100 |
○売上高経常利益率
売上高経常利益率は、売上高のうち、経常利益(営業利益+営業外収益−営業外費用)がどの程度 占めているか示す指標です。この数値が高いほど、収益性が高いと判断できます。
▼計算式 売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100 |
○損益分岐点分析
損益分岐点分析は、企業の利益を出すために、どの程度の売上高が必要なのかを示す指標です。赤字から黒字になる転換点を把握できます。
▼計算式 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率 |
安全性分析
安全性分析とは、企業の支払い能力や財務面の安全性を測るための分析手法です。基本的には、貸借対照表の資産と負債(純資産)を基に測定します。代表的な指標は以下の4つです。
○流動比率
流動比率は、流動負債に対して、一年以内に現金化できる流動資産をどの程度確保できているかを示す指標です。流動比率は200%であるのが理想とされており、最低でも100%を上回らないと資金繰りが悪化する恐れがあります。
▼計算式 流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 |
○当座比率
当座比率は、一年以内に返済義務のある流動負債に対して、当座資産をどの程度確保できているかを示す指標です。この数値が高いほど、財務の安全性が高いといえます。
▼計算式 当座比率(%) = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 |
○負債比率
負債比率は、自己資本(株主資本)に対して、他人資本(負債)がどの程度の割合を占めているかを示す指標です。この数値が低いほど、財務の安全性が高くなります。
▼計算式 負債比率(%) = 負債 ÷ 自己資本 × 100 |
○固定比率
固定比率は、返済義務のない自己資本に対して、長期的に使用する固定資産がどの程度あるのかを示す指標です。この数値が低いほど、財務の安全性が高くなります。
▼計算式 固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100 |
効率性分析
効率性分析とは、企業が投入した資本をどの程度効率的に使用できているかを測る分析手法です。主な指標には以下の4つが挙げられます。
○売上債権回転率
売上債権回転率とは、企業の売り上げ債権をどの程度の期間で回収されるか効率性を示す指標です。この数値が高いほど、債権回収までの 期間が短く、資金繰りが安定していると判断できます。
▼計算式 売上債権回転率(回) = 売上高 ÷ 売上債権 |
○総資本回転率
総資本回転率は、会社が保有しているすべての資本(総資産)を用いて、どの程度効率的に売上高を生み出しているかを示す指標です。この数値が高いほど、資本を有効活用できていると判断できます。
▼計算式 総資本回転率(回) = 売上高 ÷ 総資本 |
○固定資産回転率
固定資産回転率は、企業が保有する固定資産を使用してどの程度効率的に売上高を生み出しているかを示す指標です。この数値が高いほど、建物や設備などの有形固定資産を有効活用できていると判断できます。
▼計算式 有形固定資産回転率(回) = 売上高 ÷ 有形固定資産 |
ただし、設備入れ替えや改装など大規模な拡大投資を実施した場合には、一時的に回転率が低下 します。そのため、一概に数値が下降すれば悪いという判断はできず、上昇または下降の原因の調査をしたうえでの判断が必要です。
○棚卸資産回転率
棚卸資産回転率は、企業の棚卸資産(在庫商品や製品、原材料など)が、年間に何回転(回収) しているかを示す指標です。
棚卸資産回転率を算出する計算式は、売上高を使用する方法と売上原価を使用する方法の2種類があります。
売上高を使う計算式は売上高に対して何回転したかを示します。一方、売上原価を使う計算式は 売上原価に対して何回転したかを示し、在庫管理に役立てられます。この数値が高いほど、仕入れや販売の運用効率が良好と判断できます。
▼計算式(売上高) 棚卸資産回転率(回) = 売上高 ÷ 棚卸資産 ▼計算式(売上原価) 棚卸資産回転率(回) = 売上原価 ÷ 棚卸資産 |
生産性分析
生産性分析とは、企業が投入した設備・労働力・資金といった経営資源がどの程度の利益や付加 価値を生み出しているのかを測る分析手法です。
経営資源の投入量と、生産量・生産額などの産出量との比率から算出します。代表的な指標は以下の3つです。
○資本生産性
資本生産性は、企業が保有している資本(設備・機械・土地など)を用いて、どの程度成果を生み出したかを示す指標です。この数値が高いほど、投入した資本がより多くの付加価値を生み出していると判断できます。
▼計算式 資本生産性(円) = 付加価値額 ÷ 総資本 |
○労働生産性
労働生産性は、企業が投入した労働力(従業員)によってどの程度成果を生み出したかを示す指標です。この数値が高いほど、従業員が効率よく働いており、生産性が高い企業と判断できます。
▼計算式 労働生産性(円/人) = 付加価値額 ÷ 従業員数 |
○労働分配率
労働分配率は、生み出された付加価値のうち、労働者に対する人件費がどの程度占めているかを 示す指標です。この数値が低いほど、従業員が生み出す付加価値が高いと判断できます。
▼計算式 労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値額 × 100 |
成長性分析
成長性分析とは、企業の成長度合いや今後の成長可能性を測る分析手法です。企業の総資産や 売上高の増加率を基に算出します。主な指標は以下の4つです。
○総資産増加率
総資産増加率は、企業の総資産が前期と比較してどの程度増加したかを示す指標です。この数値が高いほど、成長力が高いと判断できます。
▼計算式 総資産増加率(%) = (当期総資産 − 前期総資産) ÷ 前期総資産 × 100 |
○純資産増加率
純資産増加率は、返済義務がない純資産が前期と比較してどの程度増加したかを示す指標です。
この数値が高いほど、経営が安定していると判断できます。
▼計算式 純資産増加率(%) = (当期純資産 − 前期純資産) ÷ 前期純資産 × 100 |
○売上高増加率
売上高増加率は、企業の売上高が前期と比較してどの程度増加したかを示す指標です。この数値が高いほど、成長性や収益の伸びがあると判断できます。
▼計算式 売上高増加率(%)= (当期売上高 − 前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100 |
○利益増加率
利益増加率は、前期と比較して、企業の利益が程度増加したかを示す指標です。数値が高くなる ほど、成長率が高いと判断できます。
▼計算式 利益増加率(%) = (当期利益 − 前期利益) ÷ 前期利益 × 100 |
経営分析を正確に行うポイント
経営分析を正確に行うには、さまざまなスキルが必要です。例えば、以下のようなスキルが挙げられます。
▼経営分析に必要なスキル
- 財務諸表や損益計算書などから経営状況を客観的に読み取るスキル
- データを客観的に分析し、他のデータと比較するスキル
- 財務分析を踏まえ、問題の解決・改善に向けての取り組みを提示するスキル
分析した数字・データを読み解く力だけでなく、現状の課題・問題点の洗い出しや具体的な改善策の策定までを含めた総合的なスキルが求められます。そのため、業務が属人化しやすく、効率化が難しいという側面もあります。業務の属人化を改善し、適切な経営分析を行える体制をつくるには、基幹システムの導入が有効です。
経営に欠かせない基幹業務の各システムが統合された基幹システムを導入することで、財務に 関するあらゆるデータを共有・分析できます。
また、各業務で発生するデータを一つに集約でき、企業の状況を正確に把握できます。多角的な 視点での分析が可能になり、的確な経営判断の迅速化を実現します。
まとめ
経営分析は、企業の現状を把握し、的確な経営戦略や事業計画、業務改善につなげるために欠かせない取組みの一つです。主に収益性・安全性・効率性・生産性・成長性といった5つの面から、さまざまな指標を用いて分析を行います。
ただし、経営分析を正確に行うためには、各業務におけるデータ収集が欠かせません。財務諸表や損益計算書などから数値を読み取り、分析・比較、そして改善策を提示するスキルも必要です。
こうしたプロセスを正確かつ効率的に行うには基幹システムの導入が有効です。企業活動のあらゆるデータを集約・可視化できるため、経営分析の精度向上に役立ちます。基幹システム導入に関するご相談は、SCSK Minoriソリューションズにお任せください。