その業務、本当に必要?Fit to Standardで実現する基幹システムの業務効率化とは
従来からITシステム導入が行われてきたものの、依然として解消されていないのが業務の「ムリ・ムダ・ムラ」です。
業務でムリ・ムダ・ムラを生む大きな原因のひとつが、基幹システムとそれに関する一連の業務プロセスとされています。既存の基幹システムにはどのような問題があるのか、弊社が2022年に実施した基幹システム利用実態調査から紐解いていきます。
目次[非表示]
- 1.業務の非効率が解消されない現状。その原因となる「ムリ・ムダ・ムラ」
- 2.業務のムリ・ムダ・ムラはなぜ発生する?
- 3.基幹システムのスクラッチ開発では満足度が低い⁈
- 4.スクラッチ開発での課題とは
- 4.1.システム間連携が不十分
- 4.2.業務やシステムを把握しているITスタッフが高齢化している
- 4.3.現行の業務とマッチしていない
- 4.4.多重入力/情報分散/属人化した業務がある
- 5.業務のムリ・ムダ・ムラをなくすための基幹システムとは
- 5.1.全体最適な統合システム(ERPパッケージ)の導入検討
- 5.2.属人化や慣習化を排除する業務プロセス標準化
- 5.3.ERPパッケージを前提としたFit To Standardの導入アプローチの採用
- 6.ERPパッケージをFit To Standardのアプローチで導入する重要性
- 7.レガシーシステムが直面する「2025年の崖」
- 8.業務をシステムに合わせる「Fit To Standard」がもたらす効果
- 8.1.短期間・低コストでの導入が可能
- 8.2.業務プロセスを最適化できる
- 8.3.バージョンアップにより常に最新機能が利用できる
- 9.Fit To Standardによる業務標準化の流れ
- 10.ERPパッケージを選ぶ際のポイント
- 10.1.ベンダーのサポート実績が豊富か
- 10.2.完成度の高いビジネスシナリオが組み込まれているか
- 10.3.他のシステムとの連携が容易であるか
- 10.4.場所を選ばずに利用可能であるか
- 10.5.会社間での高度な連携が可能か(グループ会社の場合)
- 11.業務のムリ・ムダ・ムラを解消し、企業成長を促すERP導入とは
業務の非効率が解消されない現状。その原因となる「ムリ・ムダ・ムラ」
オフィスにPCが普及し「1人1台」が現実的になったのは、1990年代後半と言われています。それから20年以上が経過し、各企業では業務の効率化が進められてきました。しかし依然として非効率だと思える業務も多く、これが正しい姿なのか疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較 2021」によると、労働生産性はOECD加盟38か国中23位という低い順位となっています。各企業が生産性の向上に取り組んでいるにもかかわらず、生産性は低いままなのが実情です。
生産性が上がらない要因となるものを「業務のムリ・ムダ・ムラ」と呼んでいます。ムリ・ムダ・ムラの定義は次のようなものです。
ムリ:リソースのキャパシティを超えた業務量となっている状態のことを指します。
- 毎月、各支店からの報告を集めて経営層向けの資料を作るのに深夜残業をしている
- 手作業によるデータの加工・集計や目視でのダブルチェックなどアナログ作業が多く作業時間がかかる
ムダ:業務に対して余計な作業や動作が発生している状態のことを指します。
- 販売システムと会計システムに同じ内容をそれぞれ入力している
- 他のシステムにデータ連携するためにCSVデータをダウンロードし、他のシステムを管轄している担当者にメールでバケツリレーしている
ムラ:担当者によって業務の進め方、その作業や成果のクオリティに差がある状態を指します。
- 業務プロセスが標準化されておらず、一連の業務を覚えるのにかなりの時間がかかる
- ミスを防ぐ仕組みになっていないため、ミスの発生が担当者のスキルに依存してしまう
業務のムリ・ムダ・ムラはなぜ発生する?
なぜ業務のムリ・ムダ・ムラが発生するのでしょうか。業務システムの視点からは次のような原因が考えられます。
部分最適な個別システムの導入・運用
システムが部署ごとに導入されており、業務プロセス全体が最適化されていない問題が多く見受けられます。システム間の互換性を意識せず、業務プロセスの一部のみ最適化したシステムを数多く導入してしまうと、システム連携ができない、もしくは連携に伴う追加開発が必要となりシステム全体がどんどん複雑化されていくといったケースも起こりえます。
業務やシステム処理の属人化によるムラと慣習化によるムダ
システム処理がマニュアル連携で行われるということも珍しくありません。その結果、入力ミス、操作ミスが発生してしまい、担当者によって精度にムラがでます。また、ムダの多い作業が慣習化したことにより、その作業がムダであるかどうかさえ疑問に思わないユーザーも多く、業務改善の足かせとなっています。
業務の標準化を前提としないシステム導入
業務の標準化とは、専任の担当者がいなくても業務が回る状態、誰が行っても品質が保たれる状態になるよう業務手順を最適化することです。ところが、慣れた業務手順を変更することに抵抗を示すユーザーは多く、現行の業務プロセスに合わせてシステムを構築しているケースが多々あります。この場合、既存のシステムを利用している限り業務プロセスを変更することが困難です。
基幹システムのスクラッチ開発では満足度が低い⁈
業務のムリ・ムダ・ムラの大きな原因となっているのが基幹システムです。弊社が2022年9月に実施した「基幹システム利用実態調査 2022」で、現在利用している基幹システムの満足度を質問したところ、「満足」と答えている企業の割合は32.1%に留まりました(※図1)。
(図1)基幹システムの満足度
加えて「スクラッチで開発したシステム」「特定の業務に特化したパッケージ」「全ての業務をカバーする統合型パッケージ(ERP)」という導入形態別にも満足度を集計しました。
すると「不満」と回答した企業は「スクラッチで開発したシステム」で42.6%、「特定の業務に特化したパッケージ」は23.9%、「全ての業務をカバーする統合型パッケージ(ERP)」で19.2%となり、スクラッチ開発が最も満足度が低い結果となっています。(※図2)
(図2)導入形態による満足度の違い
スクラッチのシステムはパッケージと異なり、その企業の業務プロセスが円滑に運用されるよう設計しているはずです。それにもかかわらず満足度が最も低いという結果は、スクラッチ開発が業務に合わせているために業務の最適化を阻害していることを示唆しています。
スクラッチ開発での課題とは
では、スクラッチ開発で具体的にどのような課題があるのか詳しく見ていきます。導入形態別の課題(※図3)の調査結果で、スクラッチ開発で課題となったもののうち、回答の多い順に紹介していきましょう。
システム間連携が不十分
従来の基幹システムは、業務単位でシステムを導入するのが一般的でした。「会計」や「人事」など、部署固有の業務に特化しているため、特定業務のやりやすさが追求される一方で、部門間の橋渡しがボトルネックになっています。
また、システムはそれぞれ固有のデータベースを持つため、複数のシステムを併用している環境下では、データの多重管理は避けられません。データを統合的に管理できないため、相関的なデータを一元管理できないことや全社横断でデータを活用できないという課題があります。
業務やシステムを把握しているITスタッフが高齢化している
IT技術者の高齢化問題は、現行システムを維持するスキルや知見の引き継ぎが不十分なまま退職を迎えてしまい、システムがブラックボックス化してしまうことが大きな課題です。特にスクラッチ開発の場合は、自社独自の業務フローや要件が含まれることが多く、それらの知識が属人化してしまう傾向があります。
長年同じシステムに携わっている熟練技術者任せのため、マニュアルが整備されていないこともしばしばです。新たに配属されたITスタッフが業務やシステムを把握できずに音を上げてしまい、熟練技術者に頼らざるを得ない状況を生んでいます。
現行の業務とマッチしていない
基幹システムは、経営資源を管理し、業務プロセスの根幹を支えます。重要度が極めて高いシステムであるが故に、数年がかりで基幹システムをスクラッチ開発する企業も多く、安易にシステム刷新するという決断に舵を切ることが出来ません。
結果、改修を加えながら同じシステムを使い続けているうちに新しい技術やサービスがどんどん生まれ、基幹システムだけが時代に取り残されている企業も少なくありません。
こうしたシステムはビジネスモデルの変化などについていくことができず、導入から年月が経過するごとに、業務とのアンマッチが大きくなっていきます。
多重入力/情報分散/属人化した業務がある
前述の通り、システム導入後にビジネスモデルが変化すると、業務とシステムのアンマッチが発生し、このギャップは時間の経過とともに大きくなっていきます。
この差を埋めるために、手作業でデータ加工・集計・多重入力するなど人海戦術で対応しているのが現実です。システムを延命させるための対処が、多重入力や情報分散などの非効率を生む要因にもなっています。
特にスクラッチ開発で発生しやすい傾向がありますが、パッケージ導入であってもアドオン開発を多用すると同様の問題が起こりえます。
(図3)基幹システムの導入形態別課題
業務のムリ・ムダ・ムラをなくすための基幹システムとは
こうした課題を解決し、業務のムリ・ムダ・ムラをなくすには、次の方向性が考えられます。
全体最適な統合システム(ERPパッケージ)の導入検討
システムはそれぞれ固有のデータベースを持っていることから、複数のシステムがあればデータの二重管理は避けられません。
それぞれのシステムで顧客マスターが固有の定義で登録されているために、ひとつの顧客マスターを追加・変更する際に、複数のシステムのマスターをメンテナンスしなければならないという問題も見受けられます。
こうした問題を防ぐには、業務プロセス全体を最適化した統合システム(ERPパッケージ)を検討するのが望ましいでしょう。
属人化や慣習化を排除する業務プロセス標準化
属人化や慣習化を排除するには、業務プロセスを部分的ではなく全体で標準化する必要があります。
現行のプロセスを踏襲するのではなく、抜本的に見直す作業が必要です。業務のムリ・ムダ・ムラは実務において問題と認識されていないケースも多く、社員の意識を変えていくことから始めなければなりません。
ERPパッケージを前提としたFit To Standardの導入アプローチの採用
パッケージシステムは法改正等にアップデートできるのがメリットのひとつです。しかしERPパッケージを現行の業務に合わせようとすると、アドオン開発が多用される傾向があり、スクラッチ開発と同様の問題に陥ります。
そこでおすすめしたいのが、Fit To Standardの導入アプローチの採用です。Fit To Standard とは、ERPパッケージに業務プロセスを合わせるアプローチを指します。
ERPパッケージでは、メーカーがこれまでの多くの導入企業から学んだベストプラクティスをビジネスシナリオとして提供しているケースがあります。このビジネスシナリオを活用することで、業務をグローバルレベルで標準化できるほか、個別のカスタマイズを抑えることができ、最終的に短期導入が可能になります。
優れたビジネスシナリオを活用できるFit To Standardは、次世代システムを構築する上で大きなポイントとなるでしょう。
ERPパッケージをFit To Standardのアプローチで導入する重要性
最近では、働き方改革やDXの観点から基幹システムを刷新する企業が増えています。既存のシステム間連携やデータの多重管理、変わりゆくビジネスモデルとの乖離が原因で、業務のムリ・ムダ・ムラを生み出していることから、根本からシステムを見直す動きが加速しているのです。
特にスクラッチ開発のシステムでは、自社の業務に合わせて設計されているにもかかわらず、利用者の不満が多いことが基幹システム利用実態調査から明らかになりました。個別業務に最適化されたシステムを部署単位で導入していることが、業務プロセス全体の標準化や、組織を横断するデータ一元管理の足枷となっています。
またスクラッチ開発では、システムがブラックボックス化される傾向にあることが属人化を助長しているため、システムを熟知しているIT技術者の高齢化という問題も乗り越えなければなりません。
近年は、組織横断でデータを活用し全社の業務プロセスを標準化するために、ERPパッケージをFit To Standardのアプローチで導入する方策へ注目が集まっています。多くの企業が、システムを業務に合わせる従来型のFit&Gapからの脱却が業務効率化の実現に寄与することに気がつき、積極的にFit To Standardを採用しはじめているようです。
レガシーシステムが直面する「2025年の崖」
2022年9月に実施した独自調査「基幹システム 利用実態調査 2022」によると、すべての業務をカバーするオールインワンタイプのERPパッケージを利用する企業の割合は17.6%にとどまっています。
しかし最近では「働き方改革」や「DX」を目的としてERPパッケージを導入する企業も少なくありません。事実、20.9%の企業がERPの導入や入れ替えを検討(図4)しており、ERPに期待すること(図5)として71.4%が「業務の効率化」、58.3%が「無駄な作業時間の削減」と回答しています。
ERPの導入が業務の抜本的な改革を目的としていることが読み取れます。
(図4)ERPの導入予定
(図5)ERPに期待すること
ERPを導入・刷新する動きが加速しているのは、経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」の影響も少なからずあります。
DXレポートでは、基幹システムの課題を解決できないと2025年には年に最大12兆円の経済損失が発生する可能性を示唆し、「2025年の崖」と名付けました。2025年の崖が発生する理由を「既存システムのレガシー化」と示し、レガシーシステムの弊害として「既存システムのブラックボックス化」と「全社最適に向けたデータ利活用の困難さ」を取り上げています。
従来型のシステムは事業部門ごとに構築されているため、他部署がデータを活用することができなくなっています。データを活用する際には、各部門の依頼に応じて情報システム部門がデータを取得・提供するケースも多く「タイムリーにデータを活用できない」「情報システム部門に負荷が集中する」という問題も発生しています。
また既存システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等も深刻な問題です。長期間にわたってシステムを運用している場合、古くなったアーキテクチャや開発技術は、追加開発によって肥大化・複雑化する傾向にあります。
例えばスクラッチ開発の場合、個々のシステムに独自ノウハウが存在するようになり、メンテナンス作業が属人化する傾向にあります。ドキュメントが管理されていないことも多く、その結果システムの中身が不可視となり、誰も修正できない状況に陥るという問題が起きています。
DXレポートによると、約80%の企業がレガシーシステムを抱えているとのことです。そのために40%以上の企業がIT投資予算の約90%を既存システムのメンテナンスに費やしているという事実も無視できません。
業務システムの複雑化・ブラックボックス化を解消することで、システムのメンテナンスにかかっていた運用・保守のコストを大幅に削減し、企業成長に向けたIT投資に配分できるようになります。そして、これまで各システムに蓄積されてきた膨大なデータ・情報資産を全社横断的に利活用できる環境を整備することで、企業の付加価値を高める取り組みができるようになるのです。
問題が解消できれば、ビジネスモデルの変革という最終的な目標につながります。これがDXレポートの最大のポイントといえるでしょう。そしてレガシーシステムの抱える問題を解消するためには、ERPパッケージの導入が最も効果があると考える企業も増えてきているのが、独自調査にも表れています。
業務をシステムに合わせる「Fit To Standard」がもたらす効果
ERPパッケージでレガシーシステムの問題を解消するためには、業務をシステムに合わせて標準化する「Fit To Standard」を徹底する必要があります。
ERPパッケージにおいても、従来は自社独自の業務プロセスとシステムとのギャップを解消するためにアドオンという形で追加開発する「Fit & Gap」のアプローチをとっていました。しかしせっかくシステムを刷新しても、アドオン開発を広げてしまうと従来型システムと同じように複雑化・ブラックボックス化されていくのは免れません。複雑化・ブラックボックス化を回避するためには、業務に合わせてシステムを構築するFit & Gapから、ERPパッケージに業務を合わせるFit To Standardへの転換が必要となります。
Fit To Standardがもたらす効果は次のようなものがあります。
短期間・低コストでの導入が可能
企業独自のシステムを構築するスクラッチ開発の場合、システムリリースまでに複数年かかることも珍しくありません。ERPパッケージをFit To Standardで導入する場合、アドオン開発を抑えることができ、短期間・低コストで導入することができます。
業務プロセスを最適化できる
ERPパッケージベンダーは、長年企業をサポートすることで、業界のベストプラクティスを学んできました。これまでの知見をビジネスシナリオとしてERPパッケージに反映しています。優れたビジネスシナリオを活用することで、業務プロセスの最適化が期待できます。
バージョンアップにより常に最新機能が利用できる
スクラッチ開発の場合、法改正に伴うシステム改修を自前で対応する必要があります。一方ERPパッケージの場合は、機能拡張が標準アップデートの中で提供されます。
しかしERPパッケージにアドオン開発を施していると、バージョンアップ時にアドオン部分との互換性がない・影響範囲が分からないといった問題が発生し、スクラッチ開発と同じ状況に陥ります。この問題を回避するためには、業務をERPパッケージに合わせ、アドオン開発せず導入することが重要です。
自社独自の業務をERPパッケージに合わせることは簡単なことではありません。全体最適のために部署を横断した基幹業務の最適化・標準化を試みても、事業部ごとに個別最適されたシステムと慣れ親しんだ事業部から、業務プロセスの見直しを求められることに抵抗されることも多いでしょう。
事業部との調整がうまくいかず断念する企業も珍しくありません。Fit To Standardを成功させるためには、トップダウンでDXを実現させるという強い意志が必要です。
Fit To Standardによる業務標準化の流れ
Fit To Standardで導入を進めるには、現状を把握し、ERPパッケージとの差異を洗い出し、そのギャップをどのように解決していくかを考えなければなりません。
業務プロセス改善のフレームワークに「As Is To Be 分析」があります。現状(As Is)を可視化し、現状の問題をもとに、あるべき姿(To Be)を導き出し業務標準化を進めるというものです。
Fit To Standardの場合は、To BeがERPパッケージの仕様になります。ERPパッケージの仕様は必ずしも現状から導きだされたプロセスではないため、現状とのギャップを把握してどのような運用でERPパッケージに合わせていくかを考えるプロセスが必要です。
Fit To Standardでの業務標準化は次のような手順で行われます。
目的の明確化
システム導入がどういった経営課題を解決するのか、明確な目的が共有されていないと「なぜ業務をERPパッケージに合わせなければならないのか」と言う点に対して事業部の合意を得ることが困難になります。システム導入前に、関係者全員に対してきちんと目的を説明し、理解してもらう必要があります。
現状把握
現行の業務プロセスを、システムだけではなくギャップを埋めるための手作業も合わせてもれなく洗い出します。作業単位で次のような項目を明確にしていくと、業務を量的に見える化できるため、業務のムリ・ムダ・ムラが一目でわかります。
- 業務手順
- 成果目標(作業時間の短縮など)
- 非機能要件
ギャップ分析
ERPの機能と現行の業務プロセスとのギャップを洗い出します。現行の業務プロセスと検討しているERPパッケージにどのようなギャップがあるのかを明確にします。ギャップが少ないか、あるいはギャップを埋めることが可能なERPパッケージを選定することが重要です。
運用検討
ギャップがある部分について業務プロセスをどのように改善していくかを検討します。ギャップを解消できない場合には、アドオン開発をしたり、他のサービスを活用したり、といった選択をせざるをえない場合もあるでしょう。
とはいえ、まずはERPパッケージ機能をベースとして業務をできるだけシンプルにすることが大切です。重要ではない作業に時間をかけていないか、そもそも不要な業務をやっていないか、といった観点で業務を見直し、本当に必要な業務を見極めることで、アドオン開発を少なくする取り組みが必要です。
システム導入の過程で業務プロセスの抜本的な見直しが求められるため、強いリーダーシップのもと、社内全体の意識を変えていく必要があります。
ERPパッケージを選ぶ際のポイント
Fit To Standardアプローチで業務のムリ・ムダ・ムラをなくすには、ERPパッケージの選定も重要なポイントです。選定の際は次のことに注意する必要があります。
ベンダーのサポート実績が豊富か
変化の激しいビジネス環境に対応するためには、ITシステムを迅速に導入する必要があります。Fit To Standardでは従来のFit&Gapのやり方とは異なるため、実務に大きな混乱が起こる可能性もあります。Fit To Standardのアプローチのサポート実績が豊富なベンダーのノウハウを活用するのもひとつの方法です。
完成度の高いビジネスシナリオが組み込まれているか
ERPパッケージは、事前に定義されているビジネスシナリオの完成度が高くないと運用で効果がでません。選定の際は次のような点をチェックしましょう。
- ビジネスシナリオが全体の業務プロセスをカバーするものであるか
- 導入も運用も簡単なシンプルな設計になっているか
- ビジネスシナリオの調整(コンフィグレーション)が柔軟にできるか
他のシステムとの連携が容易であるか
企業では基幹システム以外でもさまざまなサービスを利用しています。周辺システムとの連携を簡単に実現できる仕組みがあるかを確認しましょう。システム間連携を簡単に実現できる部品としてAPIがどれだけ用意されているかを確認すると判断しやすくなります。
場所を選ばずに利用可能であるか
働き方改革やリモートワークが定着しつつある中で、どこからでも利用できるシステムであることの重要性が高まっています。またIT投資のトレンドも所有から利用へシフトしてきています。クラウドで提供されているERPも選択肢のひとつとなるでしょう。
会社間での高度な連携が可能か(グループ会社の場合)
グループ会社の一社に導入する場合は、マスター統合やビジネスプロセス統合など、他のグループ会社と高度な連携ができる仕組みは、業務改革には重要な要素です。他のグループ会社の使用しているERPパッケージと親和性が高いものを選択するのが望ましいでしょう。
Fit To Standardが大原則とはいえ、業務をERPパッケージに合わせるにはギャップが大きいという問題に直面するかもしれません。業務にフィットしやすいERPパッケージを選び、ギャップが出た場合にどのように解決すればいいのか、ベンダーの力も借りて情報を収集しましょう。
業務のムリ・ムダ・ムラを解消し、企業成長を促すERP導入とは
最近では業務の効率化や付加価値の向上を目指して、情報システムの導入が活発に行われています。一方で情報が分断され、システム間の連携を手作業で行うなどの問題により、業務のムリ・ムダ・ムラが発生しているのも事実です。
こうした問題を解決する方法としてERPパッケージの導入を前提としたFit To Standardアプローチの重要性が高まっていることをご紹介しました。
企業独自の開発・一部の業務に特化したパッケージ、システムが統合化されたERPパッケージのどれを選択したとしても、アドオン開発をしてしまうと再び業務のムリ・ムダ・ムラが発生してしまいます。統合化されたERPパッケージのビジネスシナリオに業務を合わせていくことは、従来とは異なるアプローチです。社内で意識を変えていく必要がありますが、業務プロセス全体を標準化しデータの利活用ができる環境をつくるためには最良の選択といっても過言ではありません。
DX実現に向けた全体最適のためにFit To Standardの原則を社内で徹底すること、そしてFit To Standardで導入可能なERPパッケージとサポートするベンダーを選ぶことが、今まで抱えていた業務のムリ・ムダ・ムラを解消し、企業を成長に導くために重要な要素となるでしょう。