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ビジネス変革のスピードに素早く対応!クラウドERPのメリットと導入のポイント

多くの企業にとって、業務プロセスの複雑化や事務処理の属人化は長年の課題です。こうした課題をクラウドERP導入によって解決する企業も増えてきています。

日本に普及してから数年という歴史の浅いクラウドERPがなぜ高い評価を得ているのか、クラウドERPのメリットと導入のポイントを事例とともにご紹介していきます。



目次[非表示]

  1. 1.クラウドERPが躍進するのはなぜ? 
    1. 1.1.業務の標準化を図る
    2. 1.2.短期導入・低コストのニーズの高まり
    3. 1.3.バージョンアップによる最新技術の活用
  2. 2.クラウドERPを検討する際に注意したいこと
    1. 2.1.導入・運用のための体制づくりができているか
    2. 2.2.標準機能が充実しているか
    3. 2.3.API連携機能が豊富か
  3. 3.業種別選定ポイント
    1. 3.1.情報通信業
    2. 3.2.製造業
    3. 3.3.卸売・小売業
  4. 4.クラウドERP導入の流れ
    1. 4.1.1~2か月目(計画)
    2. 4.2.3~5か月目(実現化)
    3. 4.3.6~7か月目(検証)
  5. 5.クラウドERPケーススタディ
    1. 5.1.ビジネスの柔軟性と業務の標準化を両立(A社 印刷業)
    2. 5.2.業務の複雑さを解消することで業務の精度が大幅に向上(B社 卸売業)
  6. 6.クラウドERPでビジネス変革への対応スピードを手に入れる


クラウドERPが躍進するのはなぜ? 

2022年7月に総務省が発表した「令和4年版情報通信白書」によると、2021年の日本のパブリッククラウドサービス市場規模は1兆5,879億円となっています。2025年には3兆円を超えると予測しており、企業システムのクラウド化が加速していることが分かります。

現在は業種・業界を問わずICTの役割が大きくなっており、簡単に導入できるクラウドサービスの需要が高まっています。ネットワークの高速化・大容量化が進んだことで、より広範囲な領域にクラウドサービスを活用できる下地が整ってきました。情報通信白書によると2021年にクラウドサービスを利用している企業の割合が70.4%となっており、全く利用していない企業は少数派となっています。

しかし利用しているクラウドサービスは、Web会議やメールなどのコミュニケーションツールや、経費精算、ワークフローなど周辺業務のものにとどまり、コア業務を支える基幹システムはオンプレミスで運用している企業は未だ少なくありません。基幹システムの刷新により発生したトラブルで業務全体が停止するリスクを避けるためにクラウド化を見送る企業が多いのも事実です。

そのような中でも、近年はコスト削減や柔軟性、セキュリティへの信頼性向上などの理由で、基幹システムのクラウド化進める企業が急速に増えています

古いシステムは経年とともにメンテナンス費用が肥大化し、古い技術を使い続けることで業務が非効率化します。これらの課題がビジネス成長の妨げになっていると自覚している企業にとって「基幹システムの近代化は待ったなし」となっていることが窺えます。

数年前まで、リスクの高い基幹システムのクラウド化を成功させるには、基幹システムをそのままの構成でクラウド環境に乗せ換えてから(リフト)、徐々にクラウド独自の技術を活用した構成にする(シフト)、いわゆる「リフト&シフト」が有効とされてきました。

しかしDX実現のためのクラウド活用という観点では、業務の改革が本来の目的となります。より迅速に本来の目的を実現させるために、リフトのステップは踏まず、直接クラウドシフトする手段も有効です。

クラウドシフトの選択肢のひとつがクラウドERPです。クラウドERPを採用する主な理由として、次の3点をご紹介します。


業務の標準化を図る

クラウドERPは、アプリケーションの所有権がクラウド事業者にある「SaaS」に分類されます。

SaaSは、事業者が提供する機能を使うことが前提となるため、自社独自の業務に合わせてシステムをカスタマイできる範囲に限界があります。そのため、クラウドERPを採用する場合は、業務をパッケージに合わせる「Fit To Standard」のアプローチを取り入れることになります。

パッケージに合わせて業務プロセスを見直すことで、業務の標準化を図ることができます


短期導入・低コストのニーズの高まり

企業発展のために、社会環境の目まぐるしい変化に対応するスピードが求められています。

リフト&シフトでは、システムを再構成するのに時間もコストもかかるため、数か月で導入可能で、導入・運用のコストを抑えられるクラウドERPが有力な選択肢となってきています。

また、クラウドERPは機能追加やユーザーエクスペリエンスの向上、処理速度の高速化、法対応など、定期的に機能がアップグレードされるため、導入後も社会の変化や法的要件に対応し続けることができます


バージョンアップによる最新技術の活用

自社独自のシステムの場合は、プログラムの改修を重ねるごとにコストが肥大化していました。

クラウドERPの場合は、バージョンアップによって短いサイクルで機能拡張することができます。機能拡張では、AIによる高度なデータ分析など最新技術の活用が期待できるため、時代の変化に対応しやすい点が評価されています。


クラウドERPを検討する際に注意したいこと

クラウドERPにはさまざまな種類がありますが、業種や業界、業務内容、自社特有の課題などの条件に合わせて適切なソリューションを選択する必要があります。検討する際は、次のような点に注意しましょう。


導入・運用のための体制づくりができているか

FitToStandardのアプローチにより業務プロセスが大きく変わる可能性もあるため、実務担当者に新システムを運用する意義について理解してもらうことが重要です。

経営層が中心となり、業務改革に前向きなメンバーをプロジェクトにアサインし、一丸となって推進することが成功のカギとなります。早い段階からユーザー部門もまきこみ、FitToStandardで業務を改革するという認識を浸透するための体制づくりが必要です。


標準機能が充実しているか

FitToStandardのアプローチは、クラウドERP側に優れた標準機能を備えていなければ成り立ちません。業務をパッケージに合わせたことで、プロセスが機能しなければ業績にも影響します。

当事者だけで検討するのではなく、外部コンサルティングなどの利用をお勧めします。客観的な立場の意見も取り入れながら、標準機能を活用した改善案を前向きに検討していくことが重要です。


API連携機能が豊富か

基幹システムはコアビジネスを支えるシステムのため、多くの周辺システムと連携していることが殆どです。システム間連携が困難な場合、開発コストの増大や運用開始の遅れが発生します。様々なシステムとスムーズに連携できるAPI連携機能が豊富なEPPソリューションを選択しましょう


業種別選定ポイント

クラウドERPは汎用型のアプリケーションですが、業種によって業務プロセスに特性があるため、ソリューションを選定する際のポイントも異なります。ここでは情報通信業、製造業、卸売・小売業の選定ポイントをご紹介します。


情報通信業

「社内プロジェクトの進捗や採算性が不透明」を課題として上げる企業が多い情報通信業では、プロジェクト管理機能が強化されたクラウドERPを採用するとよいでしょう。

プロジェクト管理型のビジネスでは、スケジュールの遅延が収益を悪化させる要因となるため、予実の乖離(スタッフの実働時間超過)を素早く把握することが重要です。

また、プロジェクトの原価管理を厳密にするためにも、プロジェクト単位に収支が確認できることが望ましいでしょう。特に直接費用をプロジェクトごとに集計できることはもちろん、間接費用の配賦処理なども行える機能があると更によいでしょう。


製造業

製造業では、部品調達から製造在庫管理販売など業務範囲が多岐に渡ることから、すべての業務をカバーするオールインワンタイプのクラウドERPが適しています。

パッケージはベンダーから定期的に提供されるアップデートにより、税制度の改正や会計基準の変更に対応できることがメリットですが、製造業はアドオンを多用しているケースも多く、これが理由でアップデートのたびに動作検証や追加開発が必要になる場合があります。

極力パッケージ標準で利用することが望ましいですが、業界の特性上、業務プロセスが複雑でカスタマイズやアドオン開発が必要なケースがあります選定時にカスタマイズの可否やソリューションの適正についてしっかり確認することが重要です。


卸売・小売業

卸売・小売では、「現行業務とシステムがマッチしていない」「業務プロセスの標準化ができていない」といった課題が他業種よりも目立ちます

スクラッチ開発で業務にマッチするシステムを構築しても、時間の経過とともにビジネスモデルが変化し、システムとの乖離がパッチでもカバーしきれなくなると、パッケージ製品よりも満足度が低下するという傾向が見られます。

業務プロセス標準化という観点からも、卸売・小売業界で広く活用できるビジネスシナリオが用意されているERPパッケージを選択することが望ましいでしょう。


クラウドERP導入の流れ

短期間導入は、クラウドERPの大きなメリットです。多くの企業の導入実績から導入期間7か月のモデルケースをご紹介します。


1~2か月目(計画)

まず現行の業務フローをヒアリングします。クラウドERPに標準搭載されているビジネスシナリオと現行の業務フローを照らし合わせながら、新しい業務フローを設計します。

業務とギャップがある場合は、回避策や代替案を検討し、カスタマイズ開発の必要性や範囲を明確にします。データ移行の方法についてもこの期間で検討します。


3~5か月目(実現化)

次に、プロトタイプによりアドオンおよびカスタマイズ開発の範囲やシステム連携を含む全体の動作を確認し、業務フローや業務要件の実現性を確認します。

その後マスターの設定とデータ移行を実施、ユーザーがシステムを検証する環境を整えます。ここでは検証ユーザーが実際に操作をしながら業務フローを整備していきます。

実際にクラウドERPを業務で利用するユーザーに検証してもらうことが実現化工程での重要なポイントです。並行して必要な帳票の出力設定やアドオンおよびカスタマイズ開発を実施します。


6~7か月目(検証)

システムテストを実施し、システム全体の最終検証を行います。そのあと、ユーザーにて受入テストを実施し、本番稼働に向けた最終検証を行います。

また、運用開始後の混乱を抑えるために、全ユーザーを対象としたトレーニングを行います。最後に、本番環境へセットアップを行い、運用を開始する準備を整えます。


クラウドERPは、基本的に標準機能を利用する想定のため、導入の早い段階から機能を操作してイメージをつかむことができます。このメリットを活かして、実務担当者の意見を早めに吸い上げギャップを埋めていくことが短期導入のカギとなるでしょう


クラウドERPケーススタディ

クラウドERPの導入前と後で、具体的にどのような効果があるのでしょうか。実際にクラウドERPを導入した企業の事例をご紹介します。


ビジネスの柔軟性と業務の標準化を両立(A社 印刷業)

A社は顧客の様々な要望に柔軟に応える高品質なサービスが高く評価されています。柔軟に対応するために各店舗で業務プロセスが異なっており、なかなか標準化が進みませんでした。システムが分散しているため二重入力が必要で、それに起因した入力ミスも発生していました。

そこで、受注入力の柔軟性を持ちつつ、非効率な業務をなくしていくためにクラウドERPを導入しました。

ユーザーに操作画面を見せて、反応を見ながら完成を目指すプロトタイプ型のアプローチにより、早い段階でユーザーの意見を反映することができ、スムーズに運用開始が実現しました。

さらに、経営情報を可視化する分析ツールを合わせて導入したことで、担当者によるレポートのばらつきを解消し、スピード感のある意思決定ができるようになっています。


業務の複雑さを解消することで業務の精度が大幅に向上(B社 卸売業)

B社では長年システムを安定的に運用していたものの、老朽化のリスクが大きくなっているという課題を抱えていました。基本業務プロセスとは別に個社向け業務プロセスをシステムに組み込んでいましたが、現在の業務プロセスと乖離してしまい、これが業務を複雑化する要因になっていました。

そこで、既存業務との適合率の高く、業務の標準化・生産性の向上が実現できるクラウドERPを導入しました。

業務をシステムに合わせる方針をトップダウンで打ち出し、個別業務プロセスを廃止。業務フローの標準化によってシンプルな運用ができるようになり、業務の精度が目に見えて向上しました。

全体最適になったことで他部署の業務が理解できるようになり、業務を分散して負荷の平準化を実現しています。


クラウドERPでビジネス変革への対応スピードを手に入れる

長年利用を続けている古い基幹システムにメスを入れ、新しいサービスに移行することに二の足を踏む企業は少なくありません。

しかし、システム変革により大きなビジネスの成果を求めるのであれば、こうしたハードルを超えて最新の技術を取り入れ、新たな価値を創出していかなければならないというのが、2020年代の共通認識と言えるでしょう。

全世界でデジタル化が加速し、ビジネスモデルの変革スピードもあがっています。オンプレミスのERPは、構築に1~複数年を要するため、これらの変化についていくには限界があるのも事実です。

クラウドERPは、業務をシステムに合わせるFitToStandardアプローチにより数ヶ月での導入が可能です。クラウドERPが日本に普及してからまだ十年経っていませんが、今では数多くの企業が導入しています。

短期間で導入しながら業務プロセスを標準化して全体最適できるクラウドERPは、今後一層の注目を集めることでしょう。

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