なぜ“脱Excel”が必要? 提唱される理由と移行するべき業務
Microsoft社が開発・販売している表計算ソフト『Excel(エクセル)』は、集計作業を筆頭に多用な用途で活用されています。業務にExcelを活用しているという企業さまは多いのではないでしょうか。
一方、Excelでの管理がネックになり業務効率が低下するケースもなかにはあります。
- 個人のローカル環境で管理してブラックボックス化してしまう
- クラウド上で管理するようにした結果、各人のファイル上書きによってデータが先祖帰りしてしまう
このようにExcelでの管理が起因となる課題を感じることも少なくないでしょう。
しかし、Excelでの管理が優れている作業があることも事実です。重要なのは、『Excelで管理するモノ』『脱Excelするべきモノ』を適確に見極めることです。
そこで本記事では脱Excelが提唱される理由をはじめ、脱Excelが有効な業務、脱Excel後の管理方法について紹介します。
目次[非表示]
- 1.脱Excelが提唱される理由
- 1.1.①情報共有の効率化
- 1.2.②カスタマイズ工数の削減
- 1.3.③属人化の解消
- 2.脱Excelが有効な業務
- 3.脱Excel後の管理方法
- 3.1.Googleスプレッドシート
- 3.2.業務システム
- 3.3.BIツール
- 3.4.ERP
- 4.まとめ
脱Excelが提唱される理由
Excelは表計算ソフトとしてさまざまな用途で活用できます。
一方、上述のとおりExcel管理による課題感もあることから、脱Excelする動きも見られています。脱Excelする理由としては、大きく次の3つが挙げられます。
①情報共有の効率化
1つ目は、“情報共有の効率化”です。
Excelはデータの集計や分析、計算に適していますが、ファイルを共有するためには、データの更新後にクラウド上や社内ネットワークの共有サーバに格納したり、メールで添付したりといったアクションが必要になります。
更新から共有までをリアルタイムかつワンアクションで行えない点は情報共有の効率化において課題になると考えられます。
②カスタマイズ工数の削減
2つ目は、“カスタマイズ工数の削減”です。
Excelの強みの一つに“汎用性の高さ”が挙げられます。しかし、これは「自身で業務に合わせてテンプレート化しなければならない」という弱みになる場合もあります。
テンプレート化するためには、項目設定やデザイン性だけではなく、自動化なども必要になります。自動化するためには関数やVBAの知識を要するほか、それらが正確に動作していないと正しい解を得ることができません。テンプレート作成時および適宜のメンテナンスが必要になり、維持するための工数がかかっている場合があります。
③属人化の解消
3つ目は、“属人化の解消”です。
Excelの活用でよく起こる問題として、各個人がそれぞれファイルを管理してしまうという点が挙げられます。すべてが問題になるとはいえませんが、場合によっては管理の重複により余分な工数がかかっていたり、情報の一元管理の妨げになることも考えられます。
脱Excelが有効な業務
脱Excelが推奨されるのはどのような業務が該当するのでしょうか。
『脱Excelが提唱される理由』で挙げたとおり、ポイントとしては、『リアルタイムな情報共有が必要な業務』『正確なデータを管理しなければいけない業務』『一元化しなければいけない業務』の大きく3つです。このポイントを踏まえると、脱Excelが有効な業務には以下が挙げられます。
顧客管理
顧客対応や商談の進捗などは、リアルタイムで共有できることが大切です。複数のExcelで管理していると、データの重複が発生しやすく、どれが最新情報か判断しづらいという課題があります。場合によっては共有漏れなども起こりえます。
リアルタイムで社内共有できれば、従業員間あるいは部署間で同一のデータを活用できるため、重複入力の防止にもつながります。迅速な顧客対応も可能になり、顧客満足度の向上にも貢献します。
プロジェクト管理
プロジェクトはさまざまなタスクが複合的に積み重なり、それぞれに順序や関係性があります。そのため、Excelで管理する場合はタスクの列挙だけではなく、優先度をつけたり、全体の進行を可視化するガントチャートを設けたりといった工夫が必要です。
また、プロジェクトが進行するに連れて一部スケジュールの変更や追加タスクなどが出ることも考えられますが、その場合は逐一テンプレートを書き換える必要があります。つまりこれは、プロジェクトを進行するためのコア業務以外で工数がかかってしまうことにつながります。
プロジェクトのような複雑な管理を扱う際は、管理に特化したツールを活用することが工数削減の近道であると考えられるでしょう。
台帳管理
管理しなければならない台帳には、売上・資産・給与などさまざまな種類が挙げられます。
これらを複数のExcelで管理する場合に課題となるのが、データの点在により内容の確認・把握に工数がかかることです。
また、この集計結果は事業計画にも大きく影響します。正確な結果を出さなければいけないため、適宜設定されている関数の見直しといったメンテナンスも必要です。整合性のあるデータ管理をするためにも、脱Excelするべき業務の一つといえるでしょう。
脱Excel後の管理方法
ここからは、Excelに代わるツールについていくつか紹介します。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートは、Excelと同様に表計算ソフトとして使用できるツールです。基本的にはインストールの必要もなく、Googleアカウントとインターネット環境さえあれば利用できます。パソコンのほか、スマートフォンやタブレットでも閲覧・編集が可能です。
特に、Excelで実現できない以下のような機能はGoogleスプレッドシートを利用するメリットであるといえます。
- データ更新や修正がリアルタイムで自動保存される
- 複数人で同時に作業できる
- URLでデータを共有できる
一方、表計算ソフトという汎用性の高さは、Excelと同様に自身で関数を活用してテンプレート化する必要があるという側面も併せ持ちます。場合によっては抜本的な解決に至らない可能性もあるため、解決したい課題について慎重に検討することも重要です。
業務システム
業務システムとは、ある特定の業務に特化して作られたシステムのことを指します。 例えば、販売管理システム、顧客管理システム、在庫管理システム、給与管理システムなどが挙げられます。
あらかじめ各管理を想定して作られているため、Excelのようにテンプレートを自作する必要がないほか、正確なデータを入手することが可能です。更新状況がリアルタイムで把握できるようになるのも大きなメリットといえます。
BIツール
BIツールは、システムに蓄積されたデータを分析・活用するツールです。
単にデータを蓄積するだけではなく、その一歩先の「データを活用したい」という場合に有効です。レポーティング・OLAP分析・データマイニング・プランニングなどの機能を持ち、経営に関わるデータ活用を容易にできる特徴があります。
また、大量のデータを扱うだけでなく、分析も可能です。BIツールについては以下の記事をご参照ください。
ERP
ERPとは、企業の基幹業務を支えるシステムのことです。
業務システムやBIツールの機能が搭載されており、あらゆる情報の一元管理を実現します。さまざまな管理を集約することで、単純作業の工数を削減できるだけではなく、Excel管理では困難だった業務課題や経営課題の見える化にもつながります。
▼ERPに搭載されている機能例
- 顧客管理
- プロジェクト管理
- 財務会計・管理会計
- 販売管理
- 購買管理
- 在庫管理
- 生産管理
- 人事・給与管理
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まとめ
必ずしもすべての業務を脱Excelすることが最適であるとはいえませんが、情報共有の効率化や管理工数の削減、属人化の解消などをしたい業務に関しては脱Excelが一つの手段になると考えられます。
まずは現状、“Excelで管理していること”によって問題になっている点を洗い出し、そのうえで最適な代替案を選択することが大切です。