多様化する顧客の要求に応える一方、同社ではその変化に対するシステムの対応が求められていた。
「デジタル時代では案件が多様さを増しました。弊社では全業務を一元的に扱えるシステムを持っておらず、生産管理システム、会計システム、データ分析などがダイレクトに連携していないために、業務効率やデータ品質に課題を抱えていました」。以前の状況をこう説明するのは、同社情報システム部部長の中嶋隆之氏だ。
このような状況になっていた一因には、顧客満足を優先した事情があった。
「顧客の要望ごとにオリジナルなサービスを展開しており、その結果として店舗によって見積もり 手法、方法も異なります。これは強みの1 つですから、全社的な標準化を積極的には進めてきません でした。しかし、システム的な理想とは相反しており、二重入力など現場の負担やミスの原因にも なっていました。受注情報入力の多様性を維持しながらも、会計の統一性を保ち、処理スピードも 向上させ、入力負担も軽減できる仕組みづくりが求められていました」(中嶋氏)
また、データ分析については、各部門の求めに応じて情報システム部がデータを提供し、担当者がExcelなどで好きなように加工していた。これでは担当者が変わるたびに知見が失われがちなだけで なく、数字の意味に違いが生じ、時系列や他部門との比較が困難な状態が散見された。また情報を 抽出する情報システム部の負担も無視できないものになっていた。